東京高等裁判所 昭和56年(ネ)1192号 判決 1981年11月26日
控訴人 唐戸照夫
右訴訟代理人弁護士 川村幸信
被控訴人 吉村清
右訴訟代理人弁護士 武田峯生
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 求める判決
(一) 控訴人
1 原判決を取消す。
2 被控訴人は控訴人に対し金五二六万八、〇〇〇円およびこれに対する昭和五四年一二月二〇日以降右完済まで年六分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行宣言。
(二) 被控訴人
主文第一項と同旨。
二 主張
次に附加するほかは、原判決事実欄第二記載のとおりであるから、それを引用する。
「当審における控訴人の陳述」
仮に鉛筆による裏書の抹消が手形の抹消に当るとしても、容易に消しうる鉛筆により手形の抹消がなされた場合には、抹消者は爾後の手形取得者に対し、鉛筆による手形の抹消を抹消する権限を与えたものと推定すべきであり、控訴人は、その権限に基づいて被控訴人がなした裏書の抹消を抹消したのであるから、被控訴人は裏書人としての責任を免れない。
「右陳述に対する被控訴人の認否」
争う。
三 証拠《省略》
理由
一 当裁判所は、控訴人の本訴請求は失当であると判断するが、その理由は、次に訂正、附加するほかは、原判決理由欄記載(但し、原判決五枚目―記録二〇丁―表一〇行目冒頭から同七枚目―記録二二丁―表二、三行目の「棄却すべきところ、」まで)のとおりであるから、それを引用する。
1 原判決五枚目―記録二〇丁―裏八行目の「大」から同裏一〇行目の「ところ、」までを「被控訴人は、土地売買に関し、大成産業株式会社から本件手形ほか二通(計四通)の約束手形の裏書交付を受け、これを所持していたところ、」とあらため、同裏一一行目の「社員」の次に「(被控訴人の義弟・飯田喜好)」を加える。
2 同六枚目―記録二一丁―表七行目の「二本」の前に「鮮明な」を加え、同表八行目の「貸金」を「出資金」とあらため、同表一〇行目の「現在」を「控訴人の取得後、何人かによって」とあらため、同裏一〇、一一行目の「証拠はない。」の次に「なお、控訴人は、鉛筆による手形の抹消の場合は、爾後の手形取得者に対し、その抹消を抹消する権限を与えたものと推定すべきである、と主張するが(控訴人の当審における陳述)、鉛筆による手形の抹消は容易に抹消できるにしても、そのことだけで直ちに爾後の手形取得者に右抹消を抹消すべき権限を与えたとまでは推定することはできない。してみれば、控訴人の右主張は採用することができない。」を加える。
3 同七枚目―記録二二丁―表二、三行目の「棄却すべきところ、」を「棄却すべきである。」とあらためる。
二 そうすると、控訴人の本訴請求を認容した本件手形判決を取消し本訴請求を棄却した原判決は正当ということになるから、控訴人の本件控訴は理由がない。
よって、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡垣學 裁判官 手代木進 上杉晴一郎)
<以下省略>